第28章 弱みを握る

工藤達央が目にしたのは、中山紗奈が譲渡契約書へサインしようとペン先を落とす、その瞬間だった。思わず、動きが止まる。

――あっさり、ここまで。

中山紗奈は、自分を助けるために。自分が血の滲む思いで築いた中山グループすら手放そうとしている。

工藤達央には分かっていた。彼女がそこまでやるのは、妹の中山美由のためだ。それでも胸の奥が、じんと熱くなる。

こんな決断、簡単にできるものじゃない。

「中山さん、待ってくれ」

工藤達央が声をかけると、中山紗奈は彼の姿を認め、宙でペンを止めた。

「お前が工藤達央か」

大西虎太郎が、低い声で問いかける。視線は獲物を測るように冷たい。

「そうだ。俺...

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